1. 善意の危うさと「無知な加害」
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タコピーは純粋な善意で人を「ハッピー」にしようとしますが、その善意が現実の複雑さを理解しないまま暴走し、結果的に悲劇を招きます。
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「助けたい」という気持ちだけでは、相手の本当の苦しみや背景に気づかず、かえって傷つけてしまうことがある――この“善意の危うさ”が物語の根幹にあります。
2. 「原罪」というテーマ
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タイトルにある「原罪」は、キリスト教における“アダムとイブの禁断の果実”に由来し、「善悪を知ること」「ルールを破ること」によって背負う“避けられない罪”を意味しています。
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タコピーは「ハッピー道具」を人間に使い、ハッピー星の掟を破ったことで“原罪”を背負います。これは「無知な善意が生む罪」「自分の意思で善悪を考え始めること」の象徴です。
3. 他者理解とコミュニケーションの難しさ
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登場人物たちは、自分の思い込みや未熟なコミュニケーションによって、すれ違い・孤独・誤解を深めていきます。
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「相手の話を聞かず、自分の話を始めてしまう」「本当の気持ちを伝えられない」――こうした描写を通じて、人と人が本当に分かり合うことの難しさを問いかけています。
4. 社会問題への鋭い視点
- いじめや家庭問題、毒親、子どもの孤独など、現代社会の“見えない苦しみ”をリアルに描写し、「簡単な解決策はない」という現実を突きつけます。
5. 「救い」とは何か
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物語は「誰かを救うとはどういうことか」「本当のハッピーとは何か」を問い続けます。
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一時的な“問題解決”ではなく、相手の気持ちや痛みに寄り添うことの大切さ、そして「自分で考え、選び取ること」の重みを描いています。
まとめ
『タコピーの原罪』は、「善意」の持つ危険性や、他者理解の難しさ、現実の残酷さを通じて、「本当の救い」とは何かを読者に問いかける作品です。
無垢な善意が時に罪となりうること、そして「相手の立場に立って考えること」の大切さを強く訴えています。
所感
噂に聞く限り、ハッピーなのか、バッドなのか。最後はハッピーだが、それでも衝撃を受ける作品だと聞いていた。実際、最初の1話はなるほどなと思ったが、死に戻りがすぐにできるところを見ると、ああ、こういう作品かと。どちらかというと、それぞれの家庭にそれぞれの事情があって、それが原罪というテーマと結びつく、タコピーの道具、ルール、そういうのと上手く結びついているのが、とても興味深かった。おそらく作り手としては、原罪が最初にあって、それを表現するために、現代社会の問題と、タコピーというアクセントをつけることで実現したに違いない。もしくは、社会問題から、原罪をモチーフに、作ったか。それらをマッチさせる能力が上手く、展開もまた続きが気になる、どうなるのだろうと思わせる形で、漫画としてしっかりみれる、面白いものとなっていた。
もっと長くもできたであろうが、いまくらいの長さがテンポよく、現代にあった見せ方になるのかなと。こういうテーマを裏で扱って長く続けている王道漫画も存在しているだろうが、そのように長くするのではなく映画感覚で見れるのも最近のWeb漫画の特徴か。雑誌連載になれば自ずと長期を目指そうとするだろうから。
原罪の部分はアダムとイブの入った物語を何かしら見て欲しい。それで納得できる部分も多い。見なくても、調べる程度でも良い気がする。