朝、目覚ましよりも先に、妙なにおいで起こされた。
ベッドの横、積み上がった洗濯カゴ。3日前に「今日は絶対に干す!」と宣言したTシャツたちが、まだそこに鎮座していた。
「……あ、これは完全に発酵してますね」
私は実況アナウンサーのように、ひとりごちた。
でも捨てるのは惜しい。だってそのTシャツ、去年セールで「これ着れば人生変わる」と思い込んで買ったやつだ。
人生は変わらなかったけど、部屋着としては優秀だった。
そこで私はひらめいた。
「ズボラ女王流!洗濯物忘れ3日目のTシャツをごまかす選手権!」
まずは香水ぶっかけ戦法。
シュッ、シュッ、シュッ。
……結果、甘ったるい花の香りにまぎれて、「おばあちゃんちの納戸」みたいな匂いが立ち込めた。失格。
次にドライヤー熱風ごまかし戦法。
「殺菌とか、できるんじゃない?」と信じて。
ブォォォォ!と10分当ててみたら……、匂いは生暖かく循環するだけで逆に部屋中に広がった。会場ざわつく。
最後に開き直り戦法。
「この匂いが私の個性ですけど?なにか?」という顔で出社する。
……ただし、同僚の「あれ?雨降ってた?」というひと言で敗北を悟る。
私はオフィスのトイレに駆け込み、心に誓った。
「明日こそ……絶対に……洗濯する……!」
……と毎回思って、次の日もまた同じことを繰り返すのだった。